人と比べてしまうのをやめたい——比較グセとのつき合い方
夜、寝る前にSNSを開いて、同世代の活躍や友人の充実した週末を見て、そっとアプリを閉じる。「比べても意味ないのに」と分かっているのに、比べては落ち込んでしまう——。
「人と比べてしまう性格を直したいんです」というご相談は、本当に多いです。そして最初にお伝えするのは、いつも同じことです。比べてしまうこと自体は、やめられなくて当たり前なんです。人は、他人と比べることで自分の位置を知る生き物です。心理学では社会的比較と呼ばれるくらい、基本的な心の働きで、比較そのものは、なくせません。
だから目指すのは「比べない自分になる」ことではなく、比べたあとの扱い方を変えること。ここからは、そのつき合い方の話です。
落ち込む比較には、共通点があります
同じ「比べる」でも、落ち込む比較とそうでない比較があります。落ち込むときの比較には、だいたいこんな特徴があります。
- 相手の「見せている部分」と、自分の「全部」を比べている: SNSに流れてくるのは、その人の人生のハイライトです。撮り直した写真、選ばれた報告、書かれなかった失敗。舞台裏どうしで比べたら、案外お互いさまだったりします
- 自分が大事にしていない物差しで比べている: 本当は安定を大事にしているのに、起業した友人と「挑戦」の物差しで比べて落ち込む。物差しがそもそも借り物なんです
- 疲れているときに比べている: 心の体力が減っているとき、比較のダメージは倍になります。同じ投稿でも、元気な日は「すごいな」で終わり、疲れた日は「それに比べて私は」になる
落ち込んだときは、「相手が上」なのではなく、この三つのどれかが起きているだけ——そう疑ってみてください。
比べて落ち込んだときの、小さな手当て
落ち込んでしまったときは、こんなふうに扱ってみてください。
- 「いま比べたな」と実況する: 心の中で「あ、いま比べて落ち込んだな」と言葉にするだけで、感情と少し距離が取れます
- うらやましさの中身を見る: 「あの人の何がうらやましい?」と自分に聞いてみる。地位なのか、自由なのか、仲間なのか。うらやましさは、あなたが本当にほしいものを教えてくれる、貴重なセンサーです
- 比べる相手を「昨日の自分」に置き換える: 使い古されたことばですが、効くから残っています。先月の自分より少しでも進んでいれば、それは前進です
- 疲れている日はSNSを開かない: 対処ではなく予防です。これがいちばん効くかもしれません
SNSとの距離を、自分で設計する
比較のいちばんの供給源がSNSなら、蛇口の調整も立派な対策です。アカウントを消す必要はありません。もう少し小さな調整で十分変わります。
- 落ち込みの引き金になりやすいアカウントを、そっとミュートする(ブロックでなくていいんです)
- 寝る前と朝いちばんは開かない。心の体力が一番低い時間帯だからです
- 見る専用の時間を決める。「昼休みに10分」など、だらだら見ない仕組みにする
- タイムラインに、風景や動物など「比べようのないもの」を混ぜておく
SNSは悪者ではありませんが、設計せずに使うと、比較グセの燃料庫になります。自分の心が快適でいられる形に、使い方のほうを合わせてください。
焦りは、動きたい気持ちの裏返し
同期の昇進や友人の転身に焦るとき、その焦りの裏には「自分も何か動きたい」という気持ちが隠れていることが多いです。つまり焦りは、あなたの中のエネルギーの気配でもあるんです。
セッションでは、タロットを使ってこの「うらやましさ」や「焦り」の中身を一緒に見ていきます。カードをめくりながらお話しすると、「うらやましかったのは役職じゃなくて、あの人が楽しそうなことだった」というふうに、自分の本音が思いがけない場所から出てくることがあります。ほしいものの正体が分かれば、他人のペースではなく、自分のペースで動けるようになります。
「じゃあ自分は何がしたいんだろう」で止まってしまった方は、「やりたいことが分からない」は、悪いことじゃないも合わせて読んでみてください。
比較がやめられない日々の、少し長い話
最後に、少しだけ根っこの話を。人と比べて落ち込みやすい時期というのは、たいてい「自分の物差し」が定まっていない時期です。自分が何を大事にして、どこへ向かいたいのかがぼんやりしていると、他人の物差しが次々に流れ込んできて、そのたびに揺れてしまう。
逆に、自分の物差しが少しでも定まると、他人の活躍は「脅威」から「情報」に変わります。「あの人はあの道で楽しそう。私はこの道でいく」——そう思えた日から、SNSは急に静かな場所になります。
物差しづくりは、一朝一夕にはできません。でも、うらやましさのセンサーを手がかりに、「私がほしいのはこれかもしれない」を集めていけば、少しずつ形になっていきます。焦らなくて大丈夫です。
よくある質問
Q. 比べて落ち込むくらいなら、SNSをやめるべきでしょうか?
A. やめて楽になる人もいますが、つながりや情報源として大事なら、やめる必要はありません。まずはミュートと時間制限で「摂取量の調整」を試してみてください。それでも開くたびに苦しいなら、アプリを消すのではなく、スマホからログアウトして「見るのに一手間かかる」状態にするのが、ほどよい中間案です。
Q. 身近な同期と比べられるのがつらいです(自分で比べるのではなく、周りから)。
A. 他人からの比較は、あなたにはコントロールできません。できるのは、受け取り方の線引きだけです。「◯◯さんはもう課長なのに」と言われたら、心の中で「それは◯◇さんの物差しですね」と返して、受け取らないようにしましょう。比べる言葉を全部受け取る義務は、あなたにはありません。
Q. 昔の自分と比べても、衰えた・遅れたと感じて落ち込みます。
A. 「昨日の自分と比べる」が効かない時期もあります。病気や環境の変化があった後は特にそうです。そういうときは、比較そのものをお休みして、「今日できたこと」を数えるだけにしてみてください。回復期に必要なのは前進の実感より、「今日も一日やれた」という事実の積み重ねです。
あなたがこれまで乗り越えてきたこと、密かにがんばってきたことは、誰のタイムラインにも流れません。でも、ちゃんとあります。
比べてしまう夜は、どうか思い出してください。画面の中のハイライトと比べるには、あなたの毎日は、あまりにも本物です。