仕事は「やりたいこと」じゃなくても、いい
「やりたいことがないんです。だから、動けなくて」
キャリアのご相談で、この言葉を何度も聞いてきました。転職したい気持ちはあるのに、やりたいことがないから求人が見られない。就活の軸が決まらないから、エントリーもできない。「やりたいこと」が見つかるまで、人生が一時停止してしまっているような状態なのかもしれません。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。
「やりたいこと」、本当にひとつもありませんか?
「やりたいことは何ですか」と聞かれると固まってしまう方も、質問を少し変えると、すらすら答えてくださることがあります。
- 今度の週末にしたいことは?——ゆっくり寝たい、ドラマの続きを見たい
- 自由に使えるお金があったら?——旅行に行きたい、おいしいものを食べたい、推しのライブに行きたい
- ちょっと気になっていることは?——あの新しいカフェ、話題のゲーム、習い事
ほら、やりたいこと、たくさんあるのではないでしょうか。
「やりたいことがない」と悩んでいる方の多くは、本当は「自分が知っている『仕事』とされることの中にやりたいことがない」と悩んでいるのかもしれません。つまり、悩みの正体は「やりたいことの不在」ではなく、「仕事=やりたいことでなければいけない」という思い込みのほうにあるのかもしれませんね。
仕事は「やりたいことをするための手段」でもいい
やりたいことを仕事にする生き方は、とても素敵ですよね。でも私は、「やりたいことをするために、自分にできることでお金を稼ぐ」という生き方も、同じくらい素敵な選択肢だと思っています。
旅行が好きだから、そのために働く。おいしいものを食べる時間が幸せだから、その幸せを守るために働く。仕事はそのための手段と考える。——これは「逃げ」ではなく、ご自身の幸せの置き場所をちゃんと知っている、ということなのだと私は思います。
そう考えると、仕事選びの基準も変わってくるかもしれません。「やりたいことかどうか」だけではなく、「自分にできることか」「無理なく続けられそうか」「やりたいことのための時間とお金を確保できるか」。そんな基準で眺め直してみると、動けなかった足が少し軽くなるような気がしませんか。
やりたいことは、まだ知らない世界にあるのかもしれません
もうひとつ、お伝えしたいことがあります。いま「やりたいこと」が見つからないのは、あなたに何かが欠けているからではなく、まだ出会っていないだけかもしれない、ということです。
世の中には、私たちが名前も知らないような仕事がたくさんあります。私が大学でご相談に携わっていた頃、「たまたま配属された部署の仕事が、意外と面白くなってきたんです」というお話を、社会人になった卒業生の方から何度も伺いました。やりたいことは、頭の中だけで探すものではなく、経験の中で出会っていくものなのかもしれませんね。
ですから、いま見つからなくても大丈夫ですよ。いろいろなことを経験していくうちに、「これ、仕事にしたいかも」と思えるものに出会えたら、そのときにそちらへ舵を切ればいいのです。もし出会えなかったとしても、やりたいこと――旅行でも、推し活でも――のために働く人生は、十分に豊かで素敵なものだと私は思います。
「呪縛」からそっと出てみる
「仕事=やりたいこと」という考え方は、キラキラして見えるぶん、知らないうちに静かにあなたを縛ってしまうことがあるのかもしれません。その呪縛からそっと出てみると、「やりたいことがないから動けない」という気持ちが、「やりたいこと(好きな時間)のために動いてみよう」に変わっていくかもしれません。
それでも、ご自身が何を大切にしたいのか分からなくなってしまったら。そんなときは、カードをめくりながら、一緒に心を整理するお手伝いをさせてくださいね。あなたの「好き」は、あなたが思っているより、ずっとたくさんあるはずですよ。